人材流出企業の覆面座談会~他業種にみる人材流出の実態
今回はクリニックや薬局などの医療業界とは異なりますがITmediaビジネスオンラインの記事がとても参考になるので共有したいと思います。リンク先の記事は6ページと少しボリュームありますがとても参考になります。
リンク(別ウィンドウで開きます):人材流出企業の覆面座談会
題名はタイトルの通り“人材流出企業の覆面座談会”年齢・性別・業界・職種がバラバラな5人での座談会。人手不足なのに人材が流出する会社の原因を探ります。
記事にもありますが「今の会社に残るべきか?転職すべきか?」迷っている方は判断のヒントになるでしょう。
逆に雇用している側としては離職を考えている人の考え方を理解しどのように対策をするか?参考になると思います。
記事内のメンバーは医療関係ではありませんが状況の例として多くの面で医療現場でも似たようなケースがあり参考になると思います。
この記事ではリンク先内容の目次ごとにその要約と一言ずつコメントしたいと思います。
人材流出企業の覆面座談会目次
おかしな人事評価制度改革にドン引き!?
昔ながらの年功序列を廃止し「優秀な若手を適正に評価する人事制度を導入する」と説明され当初はおおむね好意的だったが、「目立つ功績をあげる人、わかりやすい数字でしか評価しない」という評価者の未熟ぶりが公平さに欠け、間接部門などの数字で表れにくい従業員の貢献は無視されてしまう。質より量でしか評価されず不満がたまるという結果になってしまった。
→むやみやたらと制度を導入してしまった典型例です。間違った(組織にあってない)人事評価制度の導入をすると上記のような偏った評価になり、より一層従業員のやる気がなくなります。あしたのチームが提供するゼッタイ評価®では従業員の結果目標だけでなく行動目標(コンピテンシー:仕事ができる人になる要素)についても評価をしていきますので間接部門の方へも十分な評価項目をつけられます。*単純な事務作業でも患者対応を忘れずに平行して作業ができた、とか一定期間内に大きなミスをすることなく継続できたなど。
評価者についても制度の導入初期から組織に根付くまで経験豊富なあしたのチームスタッフが評価添削を含めたアドバイスをして評価者自身が自信をもって評価できるよう寄り添っていきます。人事評価制度はその会社ごとに見合った形にカスタマイズし、馴染んでいく必要があります。
顧客が置き去りな戦略
顧客目線で仕事をすることがそもそもの会社の目的であったにもかかわらず、コンサルタントが介入したことにより「ユーザーデータを活用し利益を上げていこう」ということが優先された仕事の仕方に変えようとされ衝突。目先の売上を達成した人だけが評価されるが会社の長期展望としては良い事がない。*コンサルタントにとっては目先の売上向上がコンサル介入のメリットとして評価されるため。
→医療業界では患者第一でありながら保健医療による経営であることをしっかりと理解していかないと上記の業種と同様長期的には組織の劣化をおこします。コンサルタントを介入する場合であっても経営の方針は経営者ご自身で固めておいた方が良いです。
本来の医療提供の目的は患者が安心していつでも利用できる事です。あくまでもここにベースがありながら収益とのバランスをとる必要があります。増患・加算増など医療サービスの部分に関しては人事評価の部分に加えAAAメディカルがサポートします。
現場感覚がないリーダーによる「上司ごっこ」
読んで字のごとくですが、現場を知らない人による指揮、昔の成功体験でもって判断し最新のニーズを知らない。
現場感覚がない上司によるマイクロマネジメント(業務のあらゆる手順をことこまかに監督し、意志決定の一切を部下に任せないマネジメント手法)を行い部下がどこで何をしているか?すべての行動を把握しないと気が済まなくなっている。本当は要所要所を押さえればいいのだけれど現場感覚がないから要所がどこかわからないという結末に。結局自分自身では仕事がどのように運ばれているのか?良くわからないから、できる部下を嫉妬し情報格差を作ることで優位性を保つ。などまさに上司というポジションを保持するだけの「上司ごっこ」になっている。
→現場ではこのような作業があるんだろうな?と頭でわかっていても複雑な人と人とのかみ合わせ、オペレーションの不具合による効率の低下など経験していないと感じ取れない事がたくさんあります。
現場の「仕事をこなす事」と「管理をする事」は全く別ものです。マネージメントが苦手な管理者は部下の仕事ではなく人を管理しようとしてしまう。上司になったつもりは部下にとって大変迷惑。(*別記事:管理者は部下を管理してはいけない!? も参考に)
ゼッタイ評価®による従業員の育成は全く逆です。
上層部は出来る限り権限を委譲する。部下は自ら考え会社の方針に従って行動する。会社はその行動・結果を評価する。このサイクルの繰り返しが従業員のモチベーションを上げ組織の力となっていくのです。
新たな人事制度を作っても機能しないケース
人材流出に対し皆さんの会社ではどのような止血処置をとっているのですか?という問いに対し
「急に飲み会やランチをやる」
「上層部からいきなり「私に相談してください」と言われる」
しかし普段自分たちの事を把握していない人に相談しても何かが変わると思えない。
新たな人事制度を導入しても不公平感が出てしまいその人事評価への不満の8割は制度自体ではなく運用に原因があった。運用できないのに作りこみすぎて破綻する。シンプルな制度を浸透させて徹底的に使い込む方が重要だと思う
→経営者、上層部の信用がない事に関しては人事制度の導入をきっかけにして信用を作り上げていく必要があります。
新人事制度導入による不満については1.にもあるように
①各々の組織にあった人事評価制度を構築する必要がある。ことが一つと
②導入後の運営が何より大切であることを上層部は理解しておかなければいけません。
裏方・事務職などの数値で表しづらい間接部門の人たちの評価も含め、全体をしっかり公平に評価していく仕組みを作らないと組織全体としての生産性は上がりません。
ゼッタイ評価®は最低限のコンテンツをパッケージ化することで最速で運用を開始することが出来ます。上記最後の部分のコメントにもあるようにまずはシンプルな状態で導入し浸透させること、その後その組織にとって必要なものを随時組み入れてカスタマイズしていけば良いのです。
人事が「社員を導く」という傲慢
人なんか辞めたってうちは採用に困らないからといった危機感のない会社ほど流出している。人事のトップが社員を導くなどと傲慢な態度は単なる思い上がり。
→医療関係では相当大きな規模でない限り人事部はないと思います。しかし人事という部署がなくとも言えることです。人が辞めても”また採れば良い”などと言っていると人材流出~採用の無限ループからは抜け出せないだけでなく採用資金の漏出、採用労力、既存社員への影響も免れません。
安易な「シニア狩り」が人材流出を加速
流出すべき人を適切に流出させることは優秀な人材の流出を防ぐ一つの策ですが能力に関係なくシニアを大量に切ったら若手も一緒に辞めてしまったというケースもあります。狙った人だけを辞めさせるのは無理。どこでどうつながっているかわからないから制御なんてできない。
→会社や幹部への信頼がない中で尊敬できる上司や先輩が切られたら芋づる式に離職するリスクがあります。根底でやらなければいけないことは会社や経営幹部への信頼を回復すること。そのためにはこまめなコミュニケーションをとる必要があります。ゼッタイ評価®では四半期査定、つまり3か月に一度従業員の評価を行います。評価の前に中間面談があるので頻繁に上司と部下が話し合う機会が作れます。
ただでさえ忙しいのにそんな時間は作れない!
と思うかも知れませんが人材管理はすべての仕事の中での最優先事項です。なぜなら雇っている従業員によって今の利益を生み出しているからです。
経営にとって都合の良い数字のみを共有
業績アップがわかりやすい数字のみを共有し実態とは乖離。現場は必死になってやっとこ売り上げをだしているのに社長は「我々は富士山ではなくチョモランマに登っている」と壮大なビジョンを掲げるが現実は地下。形だけの情報共有は”人材流出企業あるある”。
→会社がうまくいっていることをアピールしたいのは上層部として当然の気持ちかも知れませんが”本当の”会社の現状を把握せずして次なる目標は見出せません。大前提として経営者や幹部が従業員から信用を得ていない事が問題。信用がないゆえ従業員へ言葉が届かないのです。
これは日常生活でも同じではないでしょうか?普段から見栄を張り本人は”ウソ”をついているつもりもない人に対し話半分で接していることはありませんか?会社の中で指揮命令系統の上層部がこれではお話になりません。
人材流出企業にならないためにできること
経営者・上層部が現場感覚をなくさないためにどうしたらよいか?現場のすべてを直に把握し続けることは困難。マネジメントのポイントは「現場感覚がない」という弱み(=現実)を部下にみせられるかどうか。主従関係ではなくチームとして協力し成果を上げていこうというマインドがあれば素直に部下に「教えてほしい」と言えるはず。
→管理者は部下を管理するのではなく部下の仕事を管理すること。部下を含めた組織への理解、フラットな人間関係を築ければ流出に至る前に対策ができます。従業員が持つ専門性に敬意を払い、信頼して任せることも大切です。人は一挙手一投足を監視されあ~でもない、こ~でもないと言われると意欲がなくなります。組織としてのルールをはっきりさせその範囲内で責任を与えて自らの意思で行動してもらうことが必要です。
入社する前に「人材流出企業」を見抜くには
参加者の中にも明確な答えはなさそうです。口コミサイトはつくりあげられる事があるし転職サイトからの情報も不十分。個人レベルでは中にいる知人から話を聞くといったところでしょうか。半年前に良いと言われていた会社が今も良いかはわからないので最新の情報を得る必要があるとの声も。
→記事中での対応策としてはインターン。医療業界ではどうでしょうか?小さな組織では難しいかも知れません。契約も複雑になるので実質難しいでしょうか?可能であるなら大変有効な手段でありお互いにとってメリットだと思います。例えば3か月だけ契約し2か月目に継続するか否かの判断とすれば雇用される側も次への職探しに時間が持てます。この期間限定採用中にお互いにミスマッチがないかどうかの確認作業を行えば末永く働いていける職場なのか判断してもらえます。
期間限定採用は難しいとしても、採用面接時にどのような職場なのか?について事細かに説明することもミスマッチを防ぐうえで大切です。
大前提として、組織として長く働いていける職場であること。放ったらかしの組織にお試しで来てもらったら3か月でサヨナラされてしまいます。そうされないために!(とりあえず入っちゃえば残る人もいるだろう)といきなり採用というのは本末転倒です。
人材流出より危険なのは・・・
人材流出会社が表面上はヤバい会社に見えないこと。なんとかやってこれてるし、、、今のままでも売上あるし、、、変わらなければという意識がない!そういう状態の会社だと経営層は、それなりに安定したキャッシュの上で、責任をとらされることもなく空理空論を言い続けるんですよね。下には「身を削ってやれ」と言うくせに。
→参加者の一人のコメントが刺さります。今は「個の時代」だから、自分が幸せじゃないところに居続けるのはやめたほうがいい。
”人を大切にしない会社はどんどん人がいなくなることによって滅びていくんだ”
まさにその通りだと思います。今後人口が減り医療に関しては支える人の負担が大きくなります。特に調剤薬局に関しては人だからやれることに重きを置いて運営するように調剤報酬が改定されていきます。当然薬局という箱に人材を入れてあとはやっといてと放ったらかしにされた人が、求められている仕事を全うできるはずがないのです。
最後に人材流出企業の共通点を一覧に羅列して記事はおしまいになっています。
人材流出企業の共通点
- 経営、管理職が現場感覚をなくしている
- 都合の悪い数字を隠す
- 仕事を質より量で評価する
- 人事が全能感を持ちすぎている
- 過度に「価値」より「金」が先
- 外の世界のことを知ろうとしない
- 手段が目的化している
- 人事制度が形だけのものになっている
- 上司と部下との間で情報の非対称性が高い
- 管理職が部下を信頼していない
- 人を大事にしない
経営者にとっては耳が痛い箇所も多くありますが、是非一度目を通してください!