労働法は社長の味方ではない!守れていますか?労働基準法
医療業界に限りませんが、昨今の慢性的な人手不足、働き方改革の推進により労働トラブルが急増しています。実際のところ最近になって急に増えているわけではなく、より明るみに出やすくなったという表現のほうが正しいような気がします。
インターネットの普及により様々な情報が簡単に手に入ることから労働者自身も就業に対しての法律を学べる機会が増えています。長時間労働、残業、有給休暇の取得。そんな中でも大事になってしまいがちな労働トラブルが「解雇」によるものです。
社長「あぁ~なんであいつは言うことを聞かないんだ!もう解雇だ!」
経営者や幹部であれば一度は頭をよぎるフレーズではないでしょうか?(苦笑)しかしこのように感情にまかせて勢いで解雇に踏み切ると「不当解雇」として従業員から訴えられてしまうといった問題が起きてしまいます。
不当解雇(ふとうかいこ)とは、解雇条件を満たしていないか、解雇の手続きが正確ではなく、労働契約や就業規則の規程に沿わずに使用者が労働者を一方的に解雇すること~労働問題弁護士ナビより~
しかし、実際の所この社長が口にした従業員の例のように会社からの指示に従わずこれまでの自分の経験に固執し新しく入って来た仲間との協調性にも欠け、好き勝手にやる従業員は存在するものです。特に医療業界ではこれまで経験してきた職場が自らの”当たり前”であったり”普通(標準)”となっていることが多く転職のたびに異なったやり方に違和感を覚え反発してしまうのです。
ここははっきりとした境界線がないところが難しいところで医療的な倫理観・保険法・医師法・薬剤師法など数々の法律とビジネスとして運営していかなければいけない現実のオペレーションとの間にどうしても組織ごとに別々の線引きがなされているためこのような問題が起きうるのです。
このような自らの意思表示が強い従業員を放っておくと次第に周りの従業員、しかも優秀な人材から退職をしていくという地獄のスパイラルに追い込まれてしまいます。このパターンは離職問題でよくある光景、会社の対応が遅れたことによる失敗例いわゆる問題児の放置です。
なぜ?優秀な社員からやめていくのか?(別記事参照“なぜ優秀な社員から離職するのか?”)。
これを防ぐためには考え方の一つとして「問題児が問題」なのではなく「問題児を統率できていない会社が問題」と捉える必要があります。会社が従業員を統率するために必要な事柄についてはまた別記事でご紹介します。
会社として辞めさせたい従業員がいる時、全く手立てがないわけではありません。退職勧奨というものがあります。この退職をすすめる「退職勧奨」は違法ではありませんが、デリケートな問題ですのでやり方によっては訴えられる可能性も多くあります。「一生懸命働いてくれているけれどうちの会社の方針とあなたの方針が異なり良いパフォーマンスを生み出せていない。別の仕事を一緒に探しませんか?」などといった歩み寄りの姿勢が大切と思われます。
労働トラブルの原因はいくつもありますが、その一つに「採用」が大きく関わっています。小さい組織であるからこそ採用の時点でうちの会社の雰囲気にあっているかな?を見極める必要があります。大きな組織のようにミスマッチで採用した従業員を店舗異動により解決させたり大勢いる店舗に余剰人員として配置したりといった対応ができず一人の人材が周囲に与える影響が大きいからです。
入社後のトラブルを防ぐためにも採用の時点でしっかりと自社にあっている人材なのか?をお互いに確認しなければなりません。そして当然のことながら自社にあっているか?を確認するためには自社がどのような会社なのか?どのようなルールで働いてもらいたいのか?を明確に持っていなければ説明のしようがなく、あうあわないを検討することが出来ません。
医療・介護業界では特に人材不足が深刻で完全なる労働者側の売り手市場。日々現場は足りない人数で疲弊しており1日でも早く人を採用してあげたい!派遣ばかり使っていて利益を圧迫している!と言った現状から来るもの拒まず採用したくなる気持ちもよくわかります。
しかし、今後の経営を考えていくと行き当たりばったりな採用を続けていても業務の質を上げていく事も、効率を良くしていく事もできず、ただやっているだけの連続になってしまいます。それでも利益が出てれば良いという会社もありますがそれはそれで一つの経営判断かも知れませんが雇用されている側は気持ちの良いものではないですね。
そして慌てて採用した人材が職場のスタッフとあわず余計に混乱。協調性のない人材を解雇においやれば訴えられるし、そのままほったらかせば再び優秀な人材から職場を去っていく負のスパイラルが始まってしまいます。
労働基準法は労働者を守るための法律、労働者のための保護法です。この労働基準法を守った上でどのように従業員と共に利益を上げていくか?採用から育成、そして末永くともに働いていくためのオペレーションを構築していかなければならないのです。